つつのんの気まぐれ日記

アラカン女子の複雑怪奇な頭の中を書いていきます。

金券ショップのとある一日

今日ギャル子が昼休みに入ると入れ違いに、お客さんが怒ってやってきた。
 
あら、確か一時間ほど前、ギャル子が接客していたお客さんだ。
 
50代ぐらいの女性で、よく商品券を買いに来る。
 
「何のためにお宅で商品券買ってると思ってんのよ!」
 
そのお客さんは、私の前に来るといきなりそう言った。
 
はあ?
 
「お釣間違えてるわよ」
 
私の働く店は、金券ショップである。
 
金券ショップは、通常定価でしか買えない商品券を、95%から99%で、販売している。
 
お客さんの中には、その数十円のために、せっせと通って下さる人達がたくさんいる。
爪に火を点す様に生活費を節約しているのだ。
と言っても、ある程度の枚数をで買えば、まあ、それなりに美味しいとも言える。
 
金券ショップの性質だろうが、お客さんはわずかなお釣の間違いにとても厳しい。
 
話を聞くと、9990円の会計で、10090円出したのにお釣を10円しかもらっていないと言う。
どうだ!
とばかりに、お客さんはレシートを私に見せた。
要するに、90円足りないと言いたいらしい。
 
たかが90円じゃないか・・・ゲッソリ
 
細かいことは気にするな。
と言いたかったが、そうもいかない。
 
私はこれでも分別のある人間である。
思うことと、言うことはちゃんと違う。
それ、分別と言うのか?
 
確かにレシートは10090円受け取っていることになっているが、
渡したお釣が、10円だったかどうかは分からない。
 
事の真相をギャル子に確かめる必要がある
と言うより、
面倒くさいので、間違えた張本人のギャル子を呼んだ方が早い。
 
ギャル子は、店の裏にある壁一枚隔てた休憩室で、お昼ご飯を食べているはずだ。
どうせ今日もマックだろう。
ほとんど毎日、飽きもせずにハンガーが―ばかり食べている。
 
休憩室には、防犯ビデオがあり、店の様子は筒抜けだ。
当然事の成り行きには壁の裏で、気が付いているはずだ。
私は、聞こえるようにギャル子の名前を呼んだ。
 
返事がない。
寝たふりか?
 
コラ、出てこんかい!
 
もちろん、声には出さない。
 
さっき言ったように、私にはれっきとした分別がある。
 
返事をしないところを見ると、お客さんに怒られるのが嫌なのだろう。
以前ギャル子は、お客さんからコテンパンに怒られたことがある。
トラウマになっているのだ。
 
「申し訳ありません、対応をしたものに確認をしてまいりますので、少しお待ち下さい」
 
そう断ったうえで、私はお客さんを後にし、休憩室のドアを開けた。
 
ギャル子が、慌てて、私にに向かって祈るように手を合わせている。
 
 


 
 
私をマリア様とでも思っているのだろうか。
 
 
   ミ       ス       り       ま       し      た    ー  。

 
 
口パクで言うな!
 
手まで摺り寄せて、拝み倒す姿勢で私に目を向ける。
 
自分で謝る気はないらしい。
 
仕方がないので、
私は、お客さんに丁寧に謝り、90円を返し帰っていただいた。
 
防犯ビデオで、お客さんが帰ったことを見届けたギャル子は、ドア越しに首だけ出して、
 
ニタッと笑い
 
あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・し・た

 
だからー
 
口パクで言うなって言ってるだろうが!
 
ギャル子は、笑いながら舌を出して、ドアから首を引っ込めた。
 
憎めない奴だ。
むしろ、かわいい。
出来の悪い猫でも飼ってる気分になる。
 
金券ショップは、今日も忙しい。