つつのんの気まぐれ日記

アラカン女子の複雑怪奇な頭の中を書いていきます。

新型コロナウイルスで集団感染を恐れる職場でこっそり聞いた同僚の陰口

職場で、数日前から日課が増えた。

毎日出勤すると、体温を申告しなくてはいけなくなったのだ。

従業員全員が毎朝体温をきっちりと測っているとは考えにくい。テキトーに答えている人も結構いるんだと思う。

 

いつもなら、ちょっとの熱ぐらいなら風邪薬でも飲んで仕事に行こうとなるが、さすがにこれだけコロナに敏感になってる今、ちょっとでも熱があれば休んだほうがいいんだろうな。

 

その記録表を見ると、さすがに37度以上はいないと思ったら、37.1度の人が一人いた。彼女は30代の契約社員さんだ。仮にAさんと呼ぼう。

 

職場は一つの広いフロアーにいくつものシマがあってグループ分けされている。Aさんは私のシマとは遠く離れている。だから彼女とは挨拶ぐらいしかしたことがない。

 

休憩時間に、トイレに行くと同僚3人がヒソヒソ話をしていた。確か、Aさんの隣のシマの人たちだ。「非常識」だとか、「マナーがない」「帰ればいいのに」「しょっちゅう早引きしてるくせに」などなど、言葉の断片が聞こえた。

 

それだけだと誰のことか分からなかったが「37度の熱」の一言で、ピーンときた。Aさんの話だ。だいたいの話の趣旨がわかった。要するに、彼女たちはAさんは熱があるのだから休むべきと考えているようだった。休まないのは非常識でマナーがないということらしい。

 

37・1度は発熱?

 

体温計で有名なテルモ(研究所)によると、日本人の7割ぐらいは体温が36.6~37.2度の間だそうだ。ただ個人差が大きく日頃から平熱が低い人は37度でも発熱の始まりってこともあるそうだ。ちなみに、34度は山や海で遭難して救出された時生死の境目が34度だそうだ

 

37度って、微妙だな。

 

3人の同僚も別にAさんがコロナにかかっているとは思ってなかっただろうが、万が一ってこともある。疑心暗鬼たらたらなのだ。そりゃそうだ、つい先日都内のドコモコールセンターで5人の感染者を出したみたいだからな。そのコールセンターは営業を停止し、従業員全員が自宅待機だそうだ。

 

決して他人事ではない。

 

小さい素因でも排除したいのだろう。誰だって、自分はかわいい、守りたいのだ自分を。そして、自分の周りの大切な家族を生活を。

 

先日、同僚が上司に質問していた。

 

「会社の中の誰かが感染したら、どうなるんですか?」

 

「ひとまず、うちの課全員しばらく休んでもらうことになると思うよ」

 

え?しばらくってどれぐらい?それは上司にもわからないらしい。もしそうなった場合、ほかの営業所がうちの営業所の仕事を代行することになってるらしい。そこまで対策立ててんのかよ。

 

これってたまったもんじゃない。もし自分が感染したら同じ課の全員に被害が及ぶのだ、逆もまたしかり、同じように誰か一人でも感染してたら自分も仕事に行けなくなるのだ。パートや派遣は確実に収入が減るんじゃないか?

 

「このフロアー喚起悪いんですけど。おまけに人の密集度も高いんですけど」

その時、同僚は上司にそう訴えかけたが・・・・

 

「そうだな」で終わった。

 

この状況、恐ろしくね?たった一人の感染者が、同じ課の運命握ってんだよ、運命共同体じゃん。これだと、みんな必要以上に小さなことに過剰に反応してしまうのもわからないでもない。

 

しかもうちの職場は同じフロアーにいる半分は常に電話でしゃべる仕事だ。飛沫感染大有りだ。

 

ドコモのコールセンターで最初に感染した人が、状況が治まった頃、周りの人からひどい扱いを受けないといいと思うのだが‥‥他人ごとながら身が縮む思いがする。

 

明日は我が身なのだ。

 

さっきのトイレでの話は続きがある。

 

彼女たちの話は予想外の方向へ漕ぎだしていた。

私はトイレの個室に入り、用を足しながら、さらに耳を澄ませた

なぜか個室に入った方が声ははっきり聞こえた。影が見えなくなったことで、ガードが緩くなったのだろうか。配管のせいか?

「Aさんて、大した仕事してないよね」

「だいたい、あの人の仕事って何なの?」

「でも、あの人、営業マンが事務所にいると、張り切るよね」(別フロアの営業マンがよく出入りする)

「子供の新しいパパでも探してるんじゃない」

「焦げたさんまもいいのかもね」

 

私はAさんとは交流がないため家庭の事情どころか彼女の人柄も知らない。でも、彼女がシングルマザーで一人で子育てしてるってのは話の内容でわかった。だが、彼女たち3人が含み笑いをした「焦げたさんま」の意味は、どう言葉をつなぎ合わせてもわからない。

 

私は、ただ便座に座ってぼんやりと思った。

 

その話、ぜんぜん新型コロナも熱も関係なくないか?ただの悪口だろ?

 

私は、思い切り大と表示されるレバーを押して、水を流した。別に大はしていない。

 

水の流れの音を合図に話し声が消えた。ドアを開けると、彼女たちが慌てて出ていく後姿が見えた。まだクスクス笑っている。

 

あまりいい気分ではない。

 

後でわかったことだが、Aさんはもともと平熱が高いらしく、37度前後は普通らしいのだ。ヒソヒソ3人組の他にもAさんの熱が気になった人がいたんだろうな、誰かが主任に直接談判したらしく、その結果、「37度でも平熱の人がいる!平熱か発熱どうかは確認している、過度に心配するのは慎むように!」とのお達しが回ってきた。

 

ちゃんと必要な情報が分かれば、「何だそんなことか」と思うが、ふとトイレでの悪口を思い出す。

 

人間が人を悪くいったり、差別したりするのは、ほとんどが理解不足からくるのだと思う。そういう意味ではこんな疑心暗鬼なときこそ正しい情報が必要だ。

 

最近あらわになったのは、海外での日本人を含むアジア人が様々な差別を受けるという問題だ。

 

新型コロナウイルスによって様々な差別や偏見が生まれている。ドイツでサッカー観戦をしていた日本人観光客が会場を追い出されたり、インドネシア在住の日本人が日本人というだけでマスクをしろ!と怒鳴られたり、こういった差別されるニュースを見ると嫌な気分になるものだが・・・・・

 

ちょっと待てよ。

 

そういや、確か2月のはじめじゃなかったか?中国の武漢でコロナが流行りだした頃、日本人も中国人観光客に対して「入店お断り」などの張り紙をした店などがニュースで報道された。それが今じゃ、日本人が海外から差別を受けてるっていうんだから・・・因果はやっぱりめぐるんだな。

 

差別や偏見は連鎖するのだ。縦にも横にも。今、世界中でそれが起きている。

 

コロナに便乗して、ひとの心の中の悪意が芽吹いているようだ。

 

おいおい、コロナよ、お前はこの世界でいったい何をあぶりだそうとしてるんだい?