つつのんの気まぐれ日記

アラカン女子の複雑怪奇な頭の中を書いていきます。

私の家政婦ナギサさん、自分の気持ちにまっすぐなキャストに好感

毎週火曜日に楽しみにしていたドラマ「私の家政婦ナギサさん」が終わってしまった。

多部未華子演じるアラサー女子(相原メイ)と大森南朋演じるスーパ家政婦おじさん(ナギサさん)とのハートフルラブコメだ。

視聴率は初放送14.2パセントで最初から期待度満載だったが2、3、4話チョット下降気味、5話からはどんどん視聴率を伸ばした。最終回は、19.6%と高視聴率を打ち出した。

 

恋愛ドラマにしては珍しいぐらいの視聴率の高さだ。

 

特に大事件もなければ、嫌な奴も出てこない。しかもキャリアウーマンと家政婦おじさんとの恋なんて・・・・?と思わないでもなかったが・・・・・文句なしに面白かった。

 

主人公メイは製薬会社のMR(医療情報提供者)で、仕事のできるバリバリのキャリアウーマン。何でも一生懸命やらないと気が済まない性格のメイは何かとストレスをためがちだ。そんな姉のメイを心配する妹が家政婦を紹介する。そんなところからドラマは始まる。派遣された家政婦は、なんと50歳過ぎてるおじさんだった。「ナギサさん」なんて名前まで女みたいだ。「最初は嫌がったメイだが、掃除も料理も完璧で、時には仕事で落ち込んでいるメイを慰めたり、アドバイスもしてくれる。そして、少しづつナギサさんが、ただのおじさんから手放してはいけない人になっていくのだが・・・・・

 

普通、こんな成り行きで恋はないな。しかもおじさんだし・・・・シンデレラストーリでも何でもない。恋愛ドラマは自分が主人公になったつもりで妄想したりするもんだけど、見ている人は意外と距離を置いて見たのでは?あくまでもドラマの世界だと。

 

これが韓ドラだったら、本当はナギサさんは超有名な家事代行サービス会社の社長で現場を知るために秘密で家政婦をやってるとか、これまた本当のナギサさんは超有名なジャーナリストで家事代行サービスの闇?を暴くために潜入取材として会社に入ったもののたまたまメイの家へ家政婦として派遣されたとか・・・・・そんな設定になるんだろうな。ちょっと発想が貧弱かしら・・・そうでもしないと、普通、ただの家政婦のおじさんと恋なんて夢がなさすぎる。普通おっさん家政婦に癒される?癒されたきゃ猫とか犬とかカメの方がいいと思う。

 

それをアラサー女子と軽快に恋愛成立させたところがすごいわ。きっとナギサさんに大森南朋さんという配役が良かったんだろうね。

 

20年ほど前、何を血迷ったのか、シナリオ教室に3カ月だけ通った。そこで言われたのが、ドラマは枷(カセ)を作ることが大事だって言われた。枷(カセ)ってなんだ?とその時思ったが、先生は、ドラマを盛り上げるための道具だと言った。枷とは刑具の一つだ。首や足を縛り付け自由を奪うもの。宿命的なもの、邪魔者、障害、つまり行動を制限させてしまうものだ。ドラマではこの枷が大きいほど盛り上がる。枷は葛藤を生むからだ。韓ドラではこの枷が驚くほどうまく効果的?に使われている。病気だの、貧乏だの、孤児育ちだの、記憶喪失だの、トラウマだの、差別だの、いじめだの、身分の違いだの、見栄を張ってついた嘘だの、遺言だの、無実の罪だの、様々に使われる。それを克服していく主人公にいつの間にか感情移入し我を忘れる。壁や障害を克服していくのドがラマの醍醐味だ。その壁や障害は大きければ大きいほどいい。私たちは様々な苦難に打ちひしがれそれでもなお立ち上がり何かを達成する主人公の姿に、胸が高鳴り思わず拍手を送っていることはないだろうか。ただの創作なのに。

 

もともとラブコメだから、あんまり大きな枷は要らないのかもしれないけど、それにしても「私の家政婦ナギサさん」には、意地悪な人が一人も出てこない。それどころか奇抜な個性的なキャラクターもいない。ちょっとだけクスッと笑えるところはあるが、爆笑するというほどでもない。おじさん家政婦っていうのはちょっと変わったキャラクターかもしれないが、ナギサさんは至って真面目な家政婦さんだ。

 

ストーリーも仕事でうまくいかなかったり、失敗したりしながらうまく乗り越えていくというような成長は描かれているが、日常でも転がっているような内容だ。メイとナギサさんの関係も、ほとんどが雇い主と家政婦の関係が淡々と進行し、いつの間にかじわっと惹かれていた、というもので、何か特別なアクシデントがあるわけでもない。

 

なのにこのドラマを毎週楽しみにしていた人は多いと思う。なぜ?

 

私はこのドラマのキャラクターたちが魅力的だったからだと思う。ドラマには、通常、ストーリー主導型とキャラクター主導型があるらしいが、「私の家政婦ナギサさん」は間違いなく後者であろう。主人公のメイやナギサさんだけではなく、メイの上司も同僚も後輩もいい人ばかり。みんなが仕事に一生懸命で、協力し合ってる。仕事に行き詰ったり悩んだりしながらも、上司が相談に乗ってくれたり励ましてくれたり。こんな人たちがいる職場で仕事ができたら、もっと自分らしく仕事ができるんじゃないか?周りに否定する人がいなかったら、もっと自分の意見も言えるんじゃないか?などと思った人もいるんだと思う。理想の同僚、理想の上司、理想の職場に心地よさを感じた人もいると思う。現実には、会社ってところは足を引っ張りあったり、嫉妬が渦巻いてたり、えこひいきがあったり、パワハラがあったり・・・・。現実の方がよっぽど枷(カセ)がある。

 

恋の方でもそうだ。同僚で友人の薫(高橋メアリージュン)、そしてライバル会社の田所さん(瀬戸康史)はこのドラマではフラれ役だ。そのフラれた後の身の振り方が実に気持ちいい。

 

4人の関係はというと・・・・薫⇒田所⇒メイ⇔ナギサさん

 

同僚で友人でもある薫はライバル会社の田所さんが好き

田所さんはメイが好き

メイはナギサさんが好き

ナギサさんはメイが好き

 

となるのだが、まず薫は田所さんに猛アタックするが、田所さんがメイのことを好きなことに気づくと、「私は自分をちゃんと見てくれる人がいい」とあっさりあきらめる。この時メイは田所さんを特別好きなわけではないので、いくらでも薫にチャンスはある。それなのに、メイに「田所さんとちゃんと向き合いなよ」と二人がうまくいくよう応援する側に回る。普通自分が付き合って!と告白した人が、自分の友人を好きだったら、二人を応援できる?嫉妬しない?人によっては、「私が最初に好きになったのだから取らないで!」ってなことにならない?なんとも薫は潔い。

 

田所さんもそうだ。メイがナギサさんに逆プロポーズをしたことを知ると、年齢を気にしてメイのことをあきらめようとするナギサさんに向かって、

「相原(メイのこと)さんにはあなたが必要なんです。彼女を幸せにしてくれないとあなたにその覚悟がないと俺はずっとあきらめがつきません!」と言って、しっかりナギサさんに発破かけてるし。 しっかりキューピット役じゃん。オイオイ、メイのことが好きなんだろ?いいのか?相手おじさんなんだから、自分の方がメイを幸せにできると思っちゃう自信過剰の男の方が多いと思うんだけど。田所さんもまた、いい人なんだよね。

 

薫も田所さんもちゃんと好きな人に好きだと伝えて、ダメなら、なぜダメなのか、理由を聞いて納得したうえで、自分でちゃんと恋を終わらせてから次の恋に行く。そういうスタンスのようだ。何とまっすぐなのだろう。気持ちいいくらいまっすぐだ。しかも好きになった相手の恋まで応援してるし。なかなか、できないよね。

 

極めつけはメイだ。転勤が決まったナギサさんにもう会えないと思った時、本当に手放せない相手がナギサさんだと気づくのだが、いきなり結婚トライアルを申し出る、逆プロポーズである。まだ相手の気持ちを確認していないのに、どうしてここまで自分の気持ちに忠実なのだろう。

 

このドラマはみんな自分の気持ちを大切にしている。どこまでもまっすぐだ。だから自分以外の人も大切にできるんだろうな。そんなところにこのドラマの魅力があるのかもしれない。

 

気持ちのいいドラマだった。いい人だけのドラマ。ドラマには裏がない。私たちは心とは裏腹のことを言ったりする。仕事も恋も駆け引きのように思っている。だから、登場人物のまっすぐさが気持ちいいのだ。悪い人も意地悪な人も出てこないから、安心して見ていられる。

 

来週は二人の新婚生活「新婚おじキュン!特別編」がある。楽しみだ。