つつのんの気まぐれ日記

アラカン女子の複雑怪奇な頭の中を書いていきます。

今の時代、学歴は重要?高卒と比べた高学歴の同僚アルバイターの現実

池井戸潤さんの著作に(アキラとあきら)という小説がある。ドラマにもなり、向井理さんと斎藤工さんのイケメンぶりに、胸をときめかされた方も多いと思う。この私も先日アマゾンプライムでドラマを見て、内容のの面白さもさることながら、イケメン二人の迫真の演技にしっかりハマってしまった。

 

うちの会社?(私はここの派遣社員)のカスタマサービス課には、性格の違う2人の友田(仮名)がいる。友田A34歳、トモダB33歳だ。この二人を見ていてよく思うことがある。

 

学歴って、それほど人生を左右するもんではないんだな。

 

「アキラとあきら」では、その境遇の違いが見どころであったが、二人の友田の見どころは、学歴である。

 

友田Aは、地元のあまりレベルの高くない(アホ高と名高い)高校を卒業し、中小企業の営業を数年やり、会社が倒産して今の職場にたどり着いている。もともと配送の方の仕事で正社員として入社(過酷なので誰でも入れる)したのだが、カスタマサービス課の方で空きが出て、そのままデスクワークとなった。なぜ彼が選ばれたのかはわからない、いまだにパソコンは、人差し指だけで打ち込んでいる。それでもスピードはそれなりに早いから不思議だ。

 

一方トモダBは一流大学を出て、まだ勉強したいと大学院まで進みその後超一流企業に数年勤め、自分に合わないとさんざん悩んで今の職場にたどり着いている。

 

たどってきた道はそれぞれ違うが、今いる場所は一緒だ。勤続年数は、友田Aが8年でトモダBが4年。友田Aは正社員でトモダBはアルバイトだ。

トモダBは最初、就活をするためのつなぎの仕事として、今の職場を選んだつもりだったのだが、意外とこれが合っていた。だが、はっきり言って、一応は会社の規模は大きいと言えど、一流大学を出て、一流企業に勤めた人間が腰を埋めるような職場ではない。彼はまだ30代である。彼自身もそう思ったのだろう。最初の2年は、必死に就活をしいていたらしいのだが、何となくしっくりとくる就職先がなかったそうだ。そうこうするうち4年が過ぎた。いまだ二人とも独身だ。女性にモテないところは似ているのかもしれない。

 

ちょっとここで二人の経歴を簡単に整理しておく

友田A            

高卒             

中小企業へ就職(営業職)            

倒産して今の職場へ      

現在勤続8年(正社員)              

仕事は可もなく不可もなく   

課長に好かれている      

 

トモダB

一流大学院卒

有名大企業へ就職 

就活のつなぎとして今の職場へ 

アルバイト採用で4年 

積極的に仕事に取り組む

課長とソリが合わない 

  

トモダBは運が悪かった。この部署は、誰かが辞めないと正社員を雇わない。ましてや、一度アルバイトとして入ったら、大概はアルバイトで飼い殺しである。

だが、たった一つ蜘蛛の糸のように細くて切れやすい1本の正社員につながる糸があった。まずこの会社でのアルバイト経験が5年以上、それから主任、係長、課長3人の推薦があり、本社の許可を得れば正社員になれる。と言っても実質、課長に気にいられさえすれば、主任や係長はどうせ課長の言いなりなのだからどうとでもなる。本社の許可も形式だけで、実質的な採用は営業所任せである。

だが、残念なのは、糸はあってもその糸はかつて誰も登ったことのない糸だ。来年で5年目を迎えるトモダBは何とかその糸を登ろうとしているのだが、肝心の課長がちょっと厄介な男である。アホなのだ。なんでこいつが課長なのかさっぱりわからない。いや、少しはわかる。上にへつらい、下にやたら厳しい。そして、イエスマンを周りに置きたがる。

 

トモダBは黙々と仕事をこなす好青年であるが、理屈が多い。と言うより、仕事の経過説明しているだけでも単純な相手には理屈に聞こえてしまうのだろう。課長は体育会系の男でチマチマしたことが大嫌いである。だが、この男こそが一番チマチマしている。しょっちゅうパソコンを見て(私たちが打ち込んだメールのやり取りや、仕事の取次などがパソコンで見れる)、人の小さなミスを探し出し、呼びつけては叱り飛ばしている。その内容がまた細かい、ほとんど、凡ミスで誰にも迷惑のかからない大事につながりえない案件がほとんどだ。大概、新人がいけにえになるのだが、なぜか4年も働いているトモダBがかなりの確率で呼び出され叱られている。

 

うちの会社は徹底した保守的な会社だ。と言うか、カスタマ課がそうだけなのかもしれない。カスタマ課と言っても電話の応対やパソコンに打ち込むだけでなく広いフロアーの中では、伝票整理や書類のチェックなどだけでなく他の事務の仕事も多数ある。トモダのように積極的に新しいことに取り組もうとする人間は歓迎されない。アルバイトなのに勝手なことをするな!ということらしい。別の会社であれば、気骨があって頼もしいと言う評価もあろうかと思うが、何よりミスを嫌うカスタマ課としては、危なっかしい存在なのかもしれないな。

 

それでもトモダBは、パートや私たち派遣からすごっく頼られている。私も彼には何度も助けられたし、いろいろ教えてもらった。でも思うんだよね、もっと彼にふさわしい職場があるんじゃないかって。もっと、頭脳を生かした職業があるんじゃないかって。

 

私は若い頃、ある業種の組合で働いていた。そこでは14年程働いた。ある時、組合に、ある大企業の倒産を機に、失業した従業員の再就職先として受け入れ要請が来た。そのリスストに書かれた者達はいづれも高学歴の者達ばかりであった。

 

組合員である大手数社が名乗りを上げた。大手と言っても中小企業なので従業員は300人以下の企業で、大企業からすれば、ハエみたいな会社だ。採用枠はほとんどが総務部長で、実際にマッチングしたのは10人程度だったと思う。

 

半年ぐらいは、いい人材が確保できてよかったとというのが、おおよその社長たちの意見だった。だがだんだん雲行きが怪しくなってきた。当時の中小企業の労働環境は大企業に勤めていた彼らから見れば、劣悪な環境だったのだ。サービス残業、有休もも名ばかりであってないようなもの、おまけに薄給だ。さらに彼らを追い込んだのはその仕事の多面性である。

中小企業の総務部長と言っても、経理もやれば、社長のスケジュール管理、社内外の冠婚葬祭やイベントの企画までやる。従業員の健康にも気を配り、家族構成も把握し、個別の相談事も引き受けていた。モノを売る以外の雑用すべてを掌握するのが総務部長であった。確かに元大企業の彼らは、数字に関しては恐ろしいほどの分析力を持っていた(社長の話から)。「でもそれだけだ」と。ある社長がポロリと言葉をこぼした。

お互いがお互いに期待するものとは違っていた。もともと、中小企業と大企業では仕事のやり方が違うのだろう。中小企業という小さなフィールドでは一つのことに精通する能力より、一つ一つの仕事のレベルはそれほど高くなくても、何でもバランスよく適度にこなせる情に厚い総務部長の方が好まれた。(私が当時見た中小企業の総務部長にはそんな人が多かったように思う)

 

段々ぎくしゃくしてきたのだろう。受け入れ企業の社長たちは、組合の事務所に来ては、彼らの愚痴を言うようになった。確か、受け入れた数名は1年以内に辞めていった。

 

まだ、今より学歴が重視された当時でさえ、学歴って何?と思うようなことはあった。

 

学歴よりも協調性や柔軟性が何より必要な職場もある。

 

トモダBには協調性も柔軟性もそれなりにある。しかも彼はよく働く。彼はこの仕事が性に合っているらしい。もしかしたら、彼はこの仕事が好きなのではないか?だとしたら、彼は地元を離れてまで一流大学に行く必要はあったのか?大学院まで行く必要はあったのか?彼は今も奨学金を返済している。

 

うちの会社は給与水準は割と高いと思う(正社員の場合)福利厚生も万全だ。それなのに、営業所の採用の場合、学歴はそれ程必要ない。今年のカスタマ課の入社は女性一人だったが、高卒である。もちろんレベルの高い高校ではある。それに比べ紆余苦節の果てに今だ正社員に手が届かない高学歴のトモダBはなんと遠回りの人生なのだろうと思う。

 

もちろんこれはたった一つの例ではある。でも意外と転がっていないか?似たような話。

 

学歴ってのは旬がある。その旬は、もちろん大学で就職先を探す時がピークなのだろう。もちろん学歴は大事だ。新卒採用では銀行や証券会社など学歴で振り落とされる職業もあるくらいだから。それでも今の時代は同じ職場で働き続けるよりも長い仕事人生の中でいくつかの転職をする可能性の方が高い。そしてその転職の際に学歴はあまり重要ではなくなってくるのだ。一度駅を降りたら、もう、その切符は使えないのだ。終身雇用がなくなり働き方が多様化された今、学歴だけで通用するほど会社は甘くない。学歴が力を発揮する旬の時期は意外と短い。今の時代は、職業に合った学歴以外のスキルと能力が必要だ。ただ、上司に好かれるという能力が必要なのは、今も昔も変わらない。

 

トモダBに足りないのは、上司に気に入られる能力なのかもしれない。同じ実力なら、上司に気に入られた方が圧倒的に仕事がやりやすくなる。トモダBは来年5年目に入る。上司の推薦を受け彼は正社員になれるだろうか。パートのおばさん達がよくする話題である。

 

是非なってもらいたいものである。日頃何かと助けてもらっている私も含めパートのおばさん達はそう思っている。